[Volvox01070] Volvox Monthly Greeting (1 April 2017) VolvoxMLの皆様 ML管理者 西郷です。 またまた、本日から3泊で石垣島にカサノリを採りに行くので、 1日早いですが、「月初めのメール」を送ります。 新年度が始まりますね。 私も、この4月から、母校であり以前に勤めていた愛知県立瑞陵高等学校 に非常勤講師として週2日ほど行くことになりました。 「非常勤講師」は初めての経験なので、「ちょっと緊張」です。 大学での「DNA実験キット」の作成も進んでおり、週1−2回は 大学に顔を出す予定です。 最近の話題から 1.蛍光カエル発見される 2.恐竜の新しい系統関係が提示される 3.鳥類の羽毛と飛行の進化 4.日本の科学研究は低迷 5.種分化の要因 6.大英自然史博物館展 7.ゴーヤのゲノム解読 8.尾坂学芸員の退職記念懇親会 9.ツクシの胞子の観察 10.本の紹介:「なぜ、どうして種の数は増えるのか」 11.カサノリの配布 12.現在配布・貸出可能な教材 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーー 1.蛍光カエル発見される  アルゼンチン国立自然科学博物館の研究チームは、  世界で初めて自然に蛍光を発する両生類を発見したと報告した。  「アメリカ科学アカデミー紀要」(PNAS)に論文を発表し、    夜行性の小さなブチアマガエル(学名 Hypsiboas punctatus)は  紫外線をあてると、赤っぽい斑点を持つ暗い黄緑色から緑色に  変化する。  3月16日のNature誌にも First fluorescent frog found として、  紹介されていた。 http://www.nature.com/news/first-fluorescent-frog-found-1.21616  原論文 Naturally occurring fluorescence in frogs  PNAS 2017 ; published ahead of print March 13, 2017 http://www.pnas.org/content/early/2017/03/07/1701053114 2.恐竜の新しい系統関係が提示される  これまで、標準的な恐竜の系統分類では、恐竜は「骨盤が鳥類に似た」  鳥盤類と「骨盤が爬虫類に似た」竜盤類という2つ分類されてきた。  今回、ケンブリッジ大学と大英自然史博物館の研究チームによって  Natureに掲載された「新しい系統分類」は、いままでの分類体系を大きく  変えるものだ。教科書などはすぐには変わらないと思われるが、  大きな反響をよびそうだ。  (3月30日の朝日新聞の科学欄にも載っていました) A new hypothesis of dinosaur relationships and early dinosaur evolution  Nature 543, 501?506 (23 March 2017) doi:10.1038/nature21700  http://www.nature.com/nature/journal/v543/n7646/abs/nature21700.html Dividing the dinosaurs  Nature 543, 494?495 (23 March 2017) doi:10.1038/543494a http://www.nature.com/nature/journal/v543/n7646/abs/543494a.html 3.鳥類の羽毛と飛行の進化   中国で発見されたジュラ紀の羽毛恐竜アンキオルニスAnchiornisの化石を  レーザー分析したところ、翼に現在の鳥の羽のような柔らかい繊維があった  ことが分かり、鳥のように飛べた可能性が浮上したという論文がネイチャー  ネイチャー・コミュニケーションズ誌に掲載された。 Basal paravian functional anatomy illuminated by high-detail body outline Nature Communications 8, doi:10.1038/ncomms14576 Published online:01 March 2017 http://www.nature.com/articles/ncomms14576   羽毛と飛行に関連した概説記事が2月24日のScience誌にも出ていた。  こちらには、The route from wings to flight という図もある。 A Mesozoic aviary  Science? 24 Feb 2017:Vol.355,Issue 6327,pp.792-794  http://science.sciencemag.org/content/355/6327/792  「始祖鳥」が「鳥」であることは、「羽毛」の存在で確認されたが、  現在では、始祖鳥より古い恐竜からも「羽毛」が発見されており、  「羽毛恐竜」などと呼ばれている。  この概説記事によると、最近の研究では、鳥類の進化は単純ではなく、  初期には、羽毛のもととなるフィラメント状のものを尾に持つもの、  四肢すべてに羽毛を持つもの、ムササビのように腕と身体の間に膜を  つくるものなど、いろいろなタイプのものが存在していた。  羽毛と翼の関連も明確ではなく、羽毛は体温保持やディスプレイのために  翼とは無関係に進化したとも考えられるという。 4.日本の科学研究は低迷  Natureの別刷り特集 Nature Index 2017 JAPAN によると、  日本の科学研究はこの10年で失速しているという。  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  日本の若い研究者たちは厳しい状況に直面しており、フルタイムで  働けるポジションも少なくなっています。日本政府の研究開発支出額は、  世界で依然としてトップクラスであるものの、2001年以降ほぼ横ばいです。  一方で、ドイツ、中国、韓国など他の国々は研究開発への支出を大幅に  増やしています。この間に日本の政府は、大学が職員の給与に充てる  補助金を削減しました。国立大学協会によると、その結果、各大学は  長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化  したのです。短期契約で雇用されている40歳以下の研究員の数は、  2007年から2013年にかけて2倍以上に膨れ上がっています。  (Natureアジアのホームページより) https://www.natureindex.com/supplements/nature-index-2017-japan/index http://www.natureasia.com/ja-jp/info/press-releases/detail/8622  以前にも書いたことがありますが、若い研究者にとって大変深刻な状況で、  今後の日本の科学教育にも影響が出てくる可能性も大いにあります。 5.種分化の要因  Scienceの3月3日号に、ガラパゴスでダーウィンフィンチの研究を40年以上  続けているグラント夫妻による、「種分化」に関する概説記事が載っていた。  この中で、著者は、ガラパゴスにおけるダーウィンフィンチの身体の大きさ、  くちばしの大きさ、くちばしの形などで見られる適応放散は「種分化」の研究  に適していると言っている。ダーウィンフィンチ全種のゲノムの比較から、  くちばしのサイズと形を決める5つの遺伝子が特定されており、さらに、  くちばし特徴と結び付けられる2つの転写因子もわかっているという。  著者は、これらの遺伝子の変化だけでなく、近縁種との「交雑」が「種分化」  の要因として重要であると言っている。人類の進化においても「交雑」に  よって形質の獲得が起こるという例として、ネアンデルタール人と共通の  祖先を持つ初期人類デニソワ人Denisovans と現代のチベット人は、  代謝経路に関係するEPAS1遺伝子を共有しており、この遺伝子によって低酸素  環境の高地に適応できたと考えられており、現代人の祖先とデニソワ人の  交雑によって導入されたと考えられている。  また、「工業暗化」で有名なオオシモフリエダシャクの黒色型はトランスポゾン  によって引き起こされたとvan't Hofらによって示されているなど、ゲノム解析  と調節タンパク質などの研究が「種分化」の仕組みの解明につながる  と期待されているようだ。 Watching speciation in action Science? 03 Mar 2017:Vol. 355, Issue 6328, pp. 910-911 DOI: 10.1126/science.aam6411 http://science.sciencemag.org/content/355/6328/910 6.大英自然史博物館展  3/25に新宿で「杉原千畝オペラ 人道の桜」公演があり、翌日3/26(日)、  上野の国立科学博物館に行ってきました。 http://www.kahaku.go.jp/  入るのに少し並び、中も混雑していましたが、「大英自然史博物館展」は  やはり、「一見の価値あり」。「始祖鳥」はもちろんのこと、  「ウォレスがダーウィンに宛てた手紙」「ドードーの一部の骨」  「ウォレスが捕獲したオランウータンの剥製」「ピルトダウン人」  「タスマニアタイガーの剥製」・・・ 書き切れません。  立派な図録(2000円)も買ってきました。  リピーターズパスを持っていると980円で入場できます。(当日券1600円)  「ダーウィンが飼っていたガラパゴスゾウガメの子供の剥製」を見逃した  のでリピーターズパスが5/18まで使えるうちにもう一度見に行きたいです。  「大英自然史博物館展」は6月11日まで。  2017年4月4日(火)からは企画展「卵からはじまる形づくり  〜発生生物学への誘い〜」(6月11日まで)も始まります。   7.ゴーヤのゲノム解読  2/28に那覇空港で乗り継ぎ待ちをしているときに、地元のテレビで報道  されていましたが、1月の記事でした。  沖縄県農業研究センター、信州大学、岩手生物工学研究センターによって、  ゴーヤー(ニガウリ)の全遺伝情報(ゲノム)の解読が行われた。  ニガウリゲノムには約4万6千個の遺伝子があり、耐病性や性の決定、  機能性成分の合成などにかかわる遺伝子の候補が分かったという。  同じウリ科のキュウリやメロンなどに比べ、血糖値の降下に関する遺伝子や、  抗ウイルス作用に関する遺伝子がそれぞれ多く存在していたとのこと。  これらの成果は、品種改良などに利用できるという。 Draft genome sequence of bitter gourd ( Momordica charantia ), a vegetable and medicinal plant in tropical and subtropical regions DNA Res (2017) 24 (1): 51-58. DOI: https://doi.org/10.1093/dnares/dsw047 8.尾坂学芸員の退職記念懇親会  3/26に名古屋市科学館の尾坂学芸員の退職を記念して懇親会が行われ、  名古屋市科学館・生命館で尾坂さんとに親交のあった70名ほどが集まった。  尾坂さんの生命館での活動は多岐に及んでおり、いろいろな分野  の人が集まったので、いろいろな人と話をすることができました。  「生命」の展示がある「科学館」は、全国的にも珍しく、尾坂さんが  その立ち上げや継続・発展に苦労されたことも紹介されました。  4月からは新任の学芸員が生命館を担当することになりますが、  これまでの蓄積の上に新たな展開を期待したいとともに、「生命館」を  これまで同様に多くの人が支える体制は続けていってほしいと思う。 9.ツクシの胞子の観察  名古屋市科学館の「生命ラボ」で「体験しよう!生命科学」と題して  簡単な実験講座が行われましたが、名古屋市立向陽高校の伊藤政夫さんと  3月19日に「動く!ツクシの胞子の観察」をやりました。3回とも満員御礼。  向陽高校や旭丘高校で、1年生の「最初の実験」として行っているものを  基本に、「小学生でもできる」ようにアレンジしました。  中学校で行っているところもあるようだが、探究の方法のモデルケースとして  高校での「最初の実験」としては最適だと思う。  なにより、息をかけると「動く」(開いていた弾糸が胞子に巻き付く)と  いうのは、生徒の反応が良し、「息に反応するとは、何に反応するのか?」  は、考えやすく、実験で確認しやすい。さらに、「しくみ」もある程度  わかっている(弾糸はセルロース質とペクチン質の二層からできている)。  トクサ類には弾糸があるのに、一般のシダ植物には弾糸がないことから、  何が考えられるかなど、いろいろな疑問も出てくる。  弾糸がどのように形成されるのかなど、この機会に、いろいろ文献を  探してみたが、なかなか奥が深い。  旭丘高校で使っていた実験プリントは、必要な方にはお送りします。 10.本の紹介:「なぜ、どうして種の数は増えるのか」  「なぜ・どうして種の数は増えるのか―ガラパゴスのダーウィンフィンチ」 Grant.Peter R./Grant.B.Rosemary 著/巌佐 庸[監訳]/山口 諒[訳]   価格 \3,456(本体\3,200)共立出版(2017/01発売)  5.の「種分化」「グラント」で検索したら、出てきました。  早速購入しました。32頁におよぶ鮮やかな口絵写真もあり、わかりやすい。  原書の出版は2008年で、約10年前の知見を元に書かれている。  Scienceの3月3日号の概説記事のように、「種分化」の研究はどんどん  進んでいる。訳者が「日本語版への序」を依頼したところ、著者からは  「原書出版以降、もっと面白くなっている」という最近の研究成果の紹介が  寄せられ、「日本語版へのあとがき」として最後に掲載されている。   11.カサノリの配布  2/28から2泊で名古屋大学の学生さんと行きましたが、  カサノリの生育は遅れていて、少ししか採れませんでした。  今回はたくさん採れると思います。(自然のものなので  確約できませんが・・・)採れたら、昨年同様に送料実費負担  (レターパック360円)で、配布しようと思います。  帰ってきたら、アナウンスいたします。 12.現在配布・貸出可能な教材 saigot◎js2.so-net.ne.jp までご連絡下さい。  (普通郵便なら送料当方負担で郵送します)  [種子]アサガオ(むらさき・光感受性高い)    テオシンテ(トウモロコシの原種)    タイワンコマツナギ(藍染めの染料 石垣島で購入・発芽確認済み)  [生体]カイコ(卵)、ミズクラゲのポリプ、    キートセラス(珪藻 プルテウスの餌)    ボルボックス、クラミドモナス、ミドリムシ(ユーグレナ)    クワ(幼木)、ゾウリムシ、ミドリゾウリムシ    ヌマムラサキツユクサ、セイロンベンケイソウ、シャジクモ  [貸出]インターバルレコーダー「レコロ」1台        キングジム http://www.kingjim.co.jp/sp/recolo_ir7/  [販売]カサノリTシャツ     http://www004.upp.so-net.ne.jp/saigot/BioEduRef/BioEduRef.htm ---------------------------------------------------- VolvoxML連絡事項 1.投稿について  Volvox ML ホームページに「投稿規定(投稿前のチェック)」  を作成しました。投稿前にチェックしてください。  http://www.i-mate.ne.jp/~volvox/Check.html  添付文書(写真も)は不可です。  Volvox ML ホームページに画像を掲載することも可能です。  (事前にvolvox-admin@i-mate.ne.jpまでご連絡下さい。)  ※なお、1回の投稿に字数制限があります。   投稿して受け付けられなかったら、削るか2つに分けて下さい。   一見短くても、多くの文字情報が埋め込まれていてエラーになる   こともあります。この場合、「テキスト」にすると良い場合もあります。 2.複数のメールアドレス登録について  学校用と自宅用など、複数のメールアドレスを登録し、  複数の場所に配信することも可能です。  volvox-admin@i-mate.ne.jp までご連絡下さい。 3.過去ログについて  http://www.i-mate.ne.jp/~volvox/archieves.html  で  最初は「パスワード登録」を行って下さい。  次回からは「過去ログをみる」でパスワードを入力してご覧下さい。   (つまり、関係ないなと思ったメールはどんどん削除すれば良いのです) 4.先月の新規入会等  メールアドレスの変更等がありましたら、   volvox-admin@i-mate.ne.jp までご連絡下さい。  先月の新規入会者はいません。 現在の会員数 121名 (愛知64 岐阜2 三重6 長野1 新潟1 青森1 秋田1 宮城3    東京14  茨城1 埼玉3 神奈川1 千葉3   大阪6 京都2 奈良1 兵庫2 岡山2 広島1 愛媛1  福岡1 佐賀1 鹿児島1 沖縄1 海外1) 以上 ---------------------------------------------------- 生物教育研究所 研究員 西郷 孝 http://www.i-mate.ne.jp/~volvox/index.html http://www004.upp.so-net.ne.jp/saigot/